おなじみの磁石。両側にN極とP極があって、NとN、PとPは反発するけど、NとPは引っ張りあってくっついてしまう。磁石と磁石のあいだに薄い紙を挟んでも、同じように反発したりくっついたりする。セロテープとか接着剤で物と物をひっつけるのとは、この点で決定的に違う。磁石の面白いところは、磁石を壊していくつかの破片にしても、それぞれの破片もまた磁石として働くところだ。かなり小さい破片にしても、磁石らしい振る舞いをするのをみんな子供の頃にやってみたことがあると思う。この経験から、どのくらいまで小さくしたら磁石が磁石で無くなるか、というのに興味がわいてくる。磁石の力は、電子一個に宿っている。だから、電子一個まで小さくしても磁石である、と考えることができる。実際のところ、電子一個では力が小さすぎて役に立たない。それでは磁石とは言えない、という意見もあると思う。電子を束ねてうまく同じ方向へ向かせると、僕らの現実の世界のスケールで磁石として力を発揮する。結局、役に立つ磁石を作るということは、電子をうまく束ねるためのうまい箱を作るということである。