ビザ問題

今日はビザの話を書きます。外国に暮らすうえで、最初の一歩、これがないと何も始まらない、というよりも、これがないと犯罪です。お巡りさんに捕まって、日本に強制送還、そして当分の間EUに入ることができなくなります。しかも、罰金と、なかなか厳しいものがあります。

パリに来てもう2ヶ月と10日経ってしまいました。あっという間です。あと、一週間で研究者ビザが切れますが、長期滞在ビザがありません。それで困っているというお話。

僕の場合、研究所に雇用されているので、長期滞在ビザの申請は、研究所経由になります。こちらについてから、いつまで経っても書類を提出する旨の連絡がないので、バカンス前にボスに相談。日本でもそうですが、その国の人たちは、外国人のビザの取り方なんか知らないので、あまり相手にしてくれません。「これは真剣に困ったことになる」と話してやっと動きだし、滑り込みでバカンス前(7月末)に書類を提出。この時点で、すでに1ヶ月ほど経っていた。ビザの申請は2ヶ月以内に行わないといけないので、まだ一ヶ月も余裕があるね、というのがフランス人の感覚。

9月に入っても、ビザに関する連絡が無い。研究所にもうひとりだけいる外国人に相談したところ、「それはヤバい。研究所をたたきまくらないと、オフィスの人たちは動かないぞ。」との忠告。忠告に従って、まずボスをたきつけようとしたけど、僕の真剣さが足りず、オフィスに電話してくれたのみ。オフィスも「パリの県庁に電話したけど出ない」という返事のみ。2、3日してもう一度ボスに頼んで電話してもらうものの、同じ回答。このあたりまでくると、オフィスが僕の書類を無くしたとか、そもそも申請をしていないんじゃないかと疑いだした。

フランスの南方に出張した時に、ボスにパスポートを見せて、もう期限切れギリギリであることを伝え、その後メールで、「もうあかん。捕まりたくないし、EUにはいれなくなるのもいやなので、日本に帰る。いったんフランスを出たら、もうずっと帰ってこれない。」と伝え、ボスに研究所の担当者の連絡先をもらい、メールを書く。これは僕には返事なし。担当者のところへ直接出向こうと思っていた矢先に、オフィスも少し真剣になったのか、県庁に連絡がついた。そこでわかったことは、書類は届いたという記録があるが、まだ処理待ち、そして、いくつか書類が無くなっている、ということだった。

書類が県庁へ届いた記録があるということで、結果的にオーバーステイになっても罪は問われないだろう(と勝手に解釈)、ということで、真剣に考え始めていた日本への貴国はやめにした。書類が無くなっていた、というのは、まあフランスなのでそんなもんだろう、とあきらめた。連絡にはたんに「足りない書類がある」と書いてあるだけで、失くしたとは言わないのだけど、それほど怒りも沸いてこない。

フランス人のバランス感覚は、日本とかドイツとかとは全然違って、それは社会システムまで一貫している。間に合わなかったら、間に合わないなりにサポートがあったりして、意外とやさしいと感じることもある。例えば、契約に必要な書類が届いていなくても、とりあえずの給料が出るとか。ドイツの場合は、書類は完璧にそろっていないと、何も始まらないし、給料ももらえない。でも、仕事は早い。個人的にはフランスのシステムの方がのんびりで好きだけど、今回のビザの件のように深刻な場合は、少しばかり苦労する。交渉力がつくかもしれないし、苦労したぶん、あの手この手を習得できるのかもしれません。一方、結局のところ、誰かを押しのけて自分を優先してもらう必要があるので、本当にみんなで幸せになれるかどうかはわからないけど、なんとなくみんな幸せそうなので(少なくとも日本人よりは)、これはこれでオッケーとして、今日のビザの話はこれでおしまい。